論理的で、簡潔な文章を書くために最低限必要な文字数とは?
最近、興味深い記事をみつけました。
この記事を読んでいて、ふと思ったことがあります。それは「適切に自分の主張を伝えるために最低限必要な文字量とは一体何文字か?」というものです。
SEO的に正しいとか、感情表現が豊かかなどといった視点は取っ払って「論理的な文章を最低限の文字数で表現するためには何文字必要か」というテーマに取り組んでみます。
そこで今回は、①論理的な文章を、②一定のルールに従って、③出来る限り簡潔に伝える文章の中でも代表的なものとして「学術論文のアブスト(要約、抄録)」を取り上げようと思います。
たいていの学術雑誌は、「論文の内容を400文字以内で要約してください」といったように論文の要約を著者に求めてきます。その文字数こそが、論理的で簡潔な文章を書くための最低限の文字数だと考えたのです。
writing in the journal | Flickr - Photo Sharing!
今回は、各学問の代表的な学術雑誌の投稿規定からアブスト部分の文字数に関する規定を調べていきます。
ちなみに、私は自分の専門だった分野以外の代表的な学術雑誌を知らないので、「“〇〇学” “学会”」と調べた時に、検索順位一位に来た学会の雑誌の投稿規定を参考にしたいと思います。
実際にはその分野を代表する雑誌ではないかもしれませんが、メンドクサイそれ以外に客観的な基準がないため簡便な方法を取らせていただきます。ご了承ください。
また、注意点があります。雑誌によっては英文のアブストを要求する雑誌もあります。そういった場合には、英語1単語を日本語2文字として計算することとします。
たとえば、「英文200語程度で要約を書いて下さい」と規定に書いてあれば、和文400文字程度を要求しているものとみなします。この基準は以下の翻訳会社の基準にのっとっています。
それでは、以下に各分野の代表的な雑誌の要約の文字数規定を記載します。
文系
日本文学協会 200字
日本哲学会 600字
日本文化人類学会 400~800字
歴史学研究会 700字
日本考古学協会 880字
日本地理学会 400字
日本言語学会 400字
企業法学会 600字
日本政治学会 300字
日本心理学会 200~300字
日本社会学会 600字
日本経済学会 200字
日本経営学会 600字
日本教育学会 1000字
最低200字 最高1000字
平均値 541字
中央値 600字
最頻値 600字
極端なのは教育学会の1000文字ですが、これは投稿規定の数値なので、実際に論文に載せる要約の文字数ではないかもしれません。
とはいえ、中央値や最頻値の値を見る限り、そういった極端な値の影響力を除いて見ても、文系の場合、おおよそ600文字程度で要約を求める雑誌が多いようですね。*1
理系
日本看護学教育学会 400字
日本保険学会 400字
日本医学会 400字
日本薬学会 500字
日本数学会 不明
日本物理学会 不明
日本化学会(化学と教育) 200~500字
日本計量生物学会 400字
日本地球化学会 400字
情報処理学会 600字
日本人間工学会(※日本工学会は連合協会のため除外) 400字
日本熱帯農業学会 700字
最低200字 最高700字
平均値 470字
中央値 400字
最頻値 400字
理系の場合、文系に比べて要求文字数が少ない傾向にあるようです。ただし、最低の文字数は200文字というところは文理それぞれで変わりません。
ちなみに、日本数学会と日本物理学会はそれぞれ10分ほど探してみたのですが、アブストの投稿規定が見当たらなかったため不明としています。
文理合計
最低200字 最高1000字
平均値 515字
中央値 500字
最頻値 400字
さて、以上のデータを併せて見ると、だいたい400~600文字程度あれば、簡潔に、論理的に自分の主張を他人に伝えることが出来ると言えそうです。
そして教育学会の文字数は別にしても、過不足なく情報を簡潔に伝えるには最低でも200文字は必要で、800文字ぐらいが上限と言えるでしょう。
なんとなく自分の文章が冗長になりがちな方、あるいは、なぜか自分の文章が相手に伝わらない方は、この数値を参考にして文章を書いてみるといいかもしれません。
余談ですが、140文字しか書けないツイッターで解釈や理解の齟齬が起こるのは、こうして見ると仕方のないことだと言えるかもしれませんね。
*1:中央値はExcelのMedianで算出しています。簡便な方法ですが、大ざっぱな傾向はこれでも十分かと思ったので採用しました。また、〇〇~〇〇文字という規定の場合は、文字数上限の方を代表値の算出に利用しています。