田舎に住むリスク管理として都市のそばに住むということ
先日、日雇いのバイトに行ってきた際、脱サラして農家になった方からとても興味深い話を聞くことができました。
その方はまだ農業1年目で現在、専業農家として暮らせるだけの収穫物も販路も持っていないとのことでした。少しだけその時のお話を書きます。
私「(作物の販路が無いという話について)JAなんかには卸せないんですか?」
農「ぼくが作っているのは無農薬野菜だからね。JAは数が無いと買いたたかれるし、無農薬かどうかなんて関係なく綺麗な野菜じゃないといけないから……」
「となると販路はどこになるんですか?」
「多いのは、個人で販売所を持ったり、個人の料理店や喫茶店との契約だったりかな」
「じゃあ、自分で販路を開拓しなきゃいけないんですか。今は農家も経営者の時代って感じですね。」
「愛知県だと知多半島の方が農業が盛んになってきていて、特に最近では6次産業(農業や工業+観光などのサービス業を組み合わせた新たな産業)」が盛んで、名古屋市内から体験農業なんかで人を呼んでいるんだ。僕もこないかって言われたんだけど……」
「どうして行かなかったんですか?」
「ぼくはこの土地の野菜に惚れてこの世界に入ったからね。それに1年ぐらいは頑張らないと何も出来ないでしょう」
おおよそこんな感じの内容でした。もちろん、この方の言うように本当に販路が無いのかは不明です。新しい販路を思いついていないだけなのかもしれません。ただ、私が主題にしたいのは別の話です。
それは「都会から離れた田舎で新たな暮らしを始めるのか、それとも都会の側の田舎で暮らすのかで生活の在り方が全く変わる」ということ。
田舎暮らしという時に、よく私たちは“田舎”とひとくくりで捉えがちです。ですが、この方のようにまだ農家として収入が無い人はどう暮らしていくか、農家として新たな産業をどう実行できるかを考える際、都会のそばに住んでいるか否かは大きな要因になってきます。
都会の近くの場合、農業だけでは生計が立てられない人は日雇いのバイトに参加することもできるでしょう。肉体労働であれば日雇い禁止の例外事由になるので、普段から身体を動かしている農家の方は比較的馴染みやすいはずです。
また、農業体験のように新たな人を呼び込む試みをしやすいのは間違いありません。以前、私もとある地域の観光プランを作ったことがありますが、都会からその場所に移動するまでのプロセスをどうするかはプランを考える上で最も重要な問題です。
そして、少し特別なことをやろうとすると、農家は(もちろん以前からそうだったのですが、これまで以上に)作業従事者としてだけでなく、個人事業主としてのスキルが求められるようになるのだと感じました。
当然といえば当然の問題ですが、今回その方の話を聞いて改めてまざまざと実感させられたことです。
話は全く変わりますが、JAって無農薬かどうかってあまり気にしないんですね。確かに地元のJAで無農薬をウリにしているのを見かけた記憶がありません。
こういった生の話を聞く機会はあまりないので、貴重な体験でした。