先日、こんな記事を見かけました。
複数のライター業の方がクラウドソーシングに対する様々な不満を書かれています。人によっては「良いところなど一切ない。つぶれろ!」という意見を言われた方もいらっしゃるようです。
そして、著者の結論としては、“未経験の人間が「依頼されて書く文章」を経験する以外にはほとんど使えない”とおっしゃっています。私はクラウドソーシングに助けられた人間として、この点だけは異論を唱えておきたいと思います。
クラウドソーシングは害悪か?
上に挙げた記事で言われているように、クラウドソーシングには一切良いところはないのでしょうか。確かに、私個人の意見としても、クラウドソーシングに対しては以下の不満を持っています。
①文章としても、その内容としても質の悪い文章が量産されている
②依頼の単価が作業量に見合っていない案件が多すぎる
③質の悪い案件が増えすぎたせいで、良い案件を出す企業がほぼ無くなった
④クライエントが文章の質も内容の質も全く判断できない
⑤コピペにうるさすぎて、引用すら嫌な顔をする業者がいる
⑥こちらが提示している条件に見合わない案件を依頼してくる業者も多数
etc……
例を挙げればキリがありませんが、特に大きいと感じているのはこの辺りです。
①番はクラウドソーシングサービスの隆盛以前からずっと考えていたことで、職業ライターが書いた記事ですら学術系の人間から見れば「自分で調べるより専門家に聞いた方が良かったのでは?」と思う記事も少なくありませんでした。
その上、クラウドソーシングによって素人が入ってきたせいで、何の根拠もない嘘が〇〇学の知見として平気で流布されるようになったのです。職業ライターは名前があるので責任を問えますが、無名の“ライター”が増えることによって責任の所在までもが曖昧になってしまいました。
そして、③番の「質の悪い案件が増えすぎたせいで、良い案件を出す企業がほぼ無くなった」のは特に最近顕著な流れです。以前は時給換算で1400円程度の案件を出していた企業の依頼の価格が半額以下にまで落ちたものもあります。
その企業は悪い意味で“クラウドソーシング慣れ”してしまったようです。条件を引き下げてきた時点で私はそこの依頼では一切書かなくなりました。
ただ、ここまで色々な不満点を書いてきましたが、職業ライターの方が言われるように、クラウドソーシングの良いところは一切ないのでしょうか。
クラウドソーシングのたった一つの良いところ
これだけ悪いところをたくさん列挙した上で、まだ良いところがあると言い張るのかと思われるかもしれませんが、あります。それは「自分の成果物と引き換えに賃金が発生することを経験できる」点です。
これは何事にも代えがたい経験であり、一般的なアルバイトや大学生活などでは決して手に入らない経験です。
たとえば、アルバイトの場合は上司から命令を受けて行った作業に対して報酬はもらえますが、自分で何かを生み出したという実感は持ちにくいでしょう。一方、大学生や大学院生の場合は、むしろお金を払って自分の産みだしたものを添削してもらいます。
大学院生の中には、自分の文章や論理構成を何度も何度も添削され、自分の考えや考え方そのものに対して懐疑的になってしまう者だって少なくありません。私自身も「自分の産みだすものには一切の価値がないのだろうか」と悩んでしまうことすらありました。私の場合、何度か受賞経験などがあるにもかかわらずです。
賞で生活はできません。賞は確かに価値を持ちますが、それは名誉であって社会的な価値ではないのです。自分は自分の力で生きられるという自信にはつながりません。
「自分が生み出したもので自分のメシを賄う」
たったこれだけのことですが、この経験の有る無しで自分に対する自信は大きく異なってきます。
愛知県でライター募集をしている企業はかなり少数です。以前少しご紹介しましたが、ネットならば住んでいる地域は関係ないとプロフィールを送ってみたこともありますが全てダメ。もちろん自分の書いた文章は送ることすら許されず、問われたのは「ブログの有無」、「ライターとしての職歴」のみです。
“ライターには学歴も資格も関係ない”と言われますが、“ライターとしての職歴”は他の業界以上に問われるところだと感じました。経験を積めと言われるのに、経験を積む場所が無いのです。
そんな私が最初に登録したクラウドソーシングサービスがクラウドワークスでした。業界最大手クラスのサービスの一つです。
クラウドソーシングで初めて自分の提出した文章がお金になった時は、それはもう感動しました。「やっぱり自分の産みだすもの、考え方、ひいては自分にも価値があるんだ」と認められたような気すらしました。
先ほど挙げた私の事例は、学歴も資格も、ましてやライターとしての職歴や年齢すら問わないクラウドソーシングならではのメリットだと思います(それが職業ライターからすれば“デメリット”なのかもしれませんが)。
成果物と引き換えに対価をもらうという経験は「依頼されて文章を書く」という実務的な経験以上のもので、「自分の価値を認めてもらう」という価値観にまで影響しうる経験だと考えています。
私はこの経験を与えてくれた場所をすでにライターになっている方の立場から「良いところなど一切ない。つぶれろ!」と一方的に言われるほど悪いものだとは思えません。
アフィリエイトとお金を稼ぐということ
媒体は変わりますが、アフィリエイトに対しても私は同じ思いを抱いています。時々、アフィリエイトやブログで収入を得るという行為に対して強い嫌悪感を示す方がいらっしゃいます。
好き嫌いは仕方がないことです。ですが、相手の思いを知って嫌うのと知らずに嫌うのでは全く別の話です。私は彼らに知っておいていただきたいことがあります。
それは、アフィリエイトも同様に、先ほど挙げた「自分の書いたものがお金を生む」という経験に繋がるということです。私は毎月A8.netやADPRESSOといったアフィリエイトの収益を公開しています。
これを金に汚い者のやることだと言われる方もいらっしゃいます。あるいは「マナーがなっていない。お金を稼ぐにしても人目につかないところでやれ」と。
ですが、何度も申し上げているように、アフィリエイトであるかどうかに関わらず、私は「自分の産みだしたものがお金になる」という経験自体の素晴らしさはずっと広め続けていきたいと思っております。
そのために“それをやればいくらの収益が得られるのか”の目安となる収益と、自分が気づいたノウハウは全て公開しています。
もちろん、第一至上目的は「自分が収益を得ること」です。これは私の一番の趣味ですから当然です。自分の報酬はいらないから誰かのために尽くしたいというなら、ボランティアにでも行っています。
ただし、やはり自分と同じように、自分の成果物には価値があるという経験をして欲しい人たちもたくさんいるのです。これは第二の目的です。ですので、嫌うにしても「何の価値もないから今すぐやめろ」と相手の言論を封殺するような形ではなく、目をつぶってあげる程度にして欲しいのです。
その代わり、アフィリエイトで稼ごうとする人間たちも自分の情報の質は、(少なくとも自分の中では)保つべきだと考えています。これは成果物と引き換えに対価をもらうという契約の中で極めて重要な倫理観であり、契約の一部です。
まとめ
話が異なる2つのものをごった煮にしてしまったせいで、少し混乱を招くかもしれません。でも根っこの思いはどちらも同じです。クラウドソーシングにもアフィリエイトにも同じ意味で存在する意義はあります。
「自分が生み出したものに価値をつけてもらえること」
これを体験した上で職業ライターを志すも、一般職を志すも決定できるのですから、それは決して一概に悪いとは言えない事だと思います。この1点だけでも、クラウドソーシングやアフィリエイトには価値があると言っていいのではないでしょうか。

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