「個人事業主なのにバイト?」と思われるかもしれませんが、日雇いや単発バイトの現場に行ってみると、それなりの割合で個人事業主の方にお会いします。
「フリーターだかフリーランスだか分からんね」なんて冗談を耳にすることがありますが、特に、新規事業を開拓してまだ日の浅い方などは副業で単発のバイトに参加されることが多いようです。
ただ、日雇いのバイトというものに参加したことが無い方もいらっしゃるでしょうし、なぜ参加する意味があるのかも分からない方もいらっしゃると思います。そこで今回は、個人事業主に単発のバイトをお勧めする理由と、どんな内容のバイトがおススメかをご紹介したいと思います。
1. 個人事業主は時間の自由がききやすい
業種にもよりますが、少なくともサラリーマンなどに比べれば個人事業主は時間の自由がききやすいという人が多いでしょう。単発のバイトや派遣に登録したことがある人なら分かると思いますが、日雇いの登録をしていると「突然ですが、明日のお仕事に入ってくれませんか?」という連絡が来ることは少なくありません。
そういった時の時給や日給は、普通にお仕事の依頼を受けるよりも高額に設定されているのです。たとえば、普段は時給1000円のお仕事が時給2000円になったりしています。ちなみに、私もそういった急なお仕事を受けたことがありますが、かなり条件は良かったです。
こうした時、時間に自由のききやすいフリーランスや個人事業主は、圧倒的に有利です。加えて、こういった依頼を受けていると、企業の側からも優先的に単発の業務を任せてくれるようになります。
あまりにバイトに力を入れ過ぎて、どちらが本業か分からなくなるような事態は避けるべきですが、少なくとも“いざというとき”に稼げる手段が多いに越したことはないでしょう。
実際、私が以前単発バイトに行った際、新規就農をしたばかりでまだ収入が少なく、時間の自由も効きやすいので、時々日雇いのバイトに参加しているという脱サラした農家さんに出会ったことがあります。
その農家さんは米農家だったのですが、冬の時期であまり本業が忙しくなかったので、資金繰りを兼ねて日雇いバイトに参加してきたのだとか。個人事業主になって、せっかく時間の自由がきくようになったのですから、空いた時間を有効に活用する手段を考えてみてはいかがでしょうか。
2. 個人事業主には副業禁止の就業規則がない
当然と言えば当然ですが、個人事業主には副業を禁止するような法令も無ければ就業規則もありません。一方サラリーマンの場合は、小銭稼ぎのために休日に日雇いのお仕事をしようとしても、副業を就業規則で禁止されている場合が多々あります。
一応、法律上はたとえ就業規則で副業を禁止されていても、会社に何らかのデメリットを与えない限り、あるいは本業に支障をきたさない限り、サラリーマンでも副業をしていいとはされています(詳細に知りたい方は以下のリンク先を参照してください)。
副業禁止の会社で副業をしてはいけないの?―副業に関する法律のウソと本当―
ですが、私が産業カウンセラーとして見聞きした限りでは、それでも副業に関して二の足を踏む方が多いようです。法的には問題なく、懲戒処分などはありえないとしても、バレた時の会社内での関係などを考えれば、そうなる気持ちも分からないではありません。
その点、個人事業主やフリーランスは日雇いバイトで収入をえようが自由ですし、誰に気兼ねすることもありません。
3. 個人事業主の多くは借金持ち
私の場合は日本学生支援機構の奨学金ですが、400万円の借金を抱えています。他にも、個人事業主の方で全く借金をしていないと言う人の方が珍しく、多くの人は大なり小なり借金を抱えていることでしょう。
ただ、そういった借金の利子を少なくするため、出来るだけ早く返そうと本業を頑張るとなると、来年の税金が増えることになってしまいます。それによって得られる本業収益の上がり幅がとてつもなく大きければ問題ありませんが、単発バイトをするのとそれほど変わらない程度なら、バイトをした方がお得です。
なぜなら、バイトのお給料は給与所得として申請できますし、何よりすでに源泉徴収を引かれた額を渡されるからです。同じだけの収入が得られるなら、バイトで収入を得た方が最終的にはお得になります。これは、個人事業主になった私が日雇いバイトをいまだに止めていない理由の1つでもあります。
借金を返すために本業を頑張るというのが本来のやり方ですが、こうした理由に応じて、日雇いのバイトをしているフリーランスの方もいらっしゃいます。
ただ、注意点として日雇いバイトの交通費などはちゃんと給与とは別に管理し、しっかりと交通費を抜いた給与分の収入で申告しましょう。余分に給与をもらっていると判断されたら損をしてしまうので、そのあたりの管理は重要です。
4. 個人事業主はなにかと要りよう
個人事業主を始めた最初の年度は、サラリーマン時代の貯蓄があったり、銀行や商工会議所から借りたお金があったりで、意外と金銭的に余裕のある人が多いように思います。
ですが、特に飲食業や小売業などでは、1年経ってもまだお客さんが定着していないということも珍しくありません。最初の見積もりよりも赤字が上回るということも大いにありうるでしょう。
『個人事業の始め方』によると、こうした場合は経費の徹底削減、借入の検討、取引先への相談、仕入れ先への相談などが主な対策となるとされています。ですが、経費削減はともかく、どれもあまり積極的には採用したくない案でしょう。
そういった時に、本業から目を離し、副業としての収入源を増やすという考え方はとても重要です。とはいえ、店の営業を一時停止して長期のバイトや派遣に行ったりでもしたら、それこそ本末転倒です。どちらが本業か分からなくなってしまいます。
すると、あくまで店の営業を続けながら収益を得る手段が必要になってきます。そうした時、日雇いのバイトという手段は一日でそれなりの収益が入ってくる副業としてかなり優秀だと言えるでしょう。
個人事業主にお勧めしたい単発バイト
「個人事業主に単発バイトが向いていることは分かったが、一体どんなバイトが向いているのか」といった方もいらっしゃるでしょう。
おススメするものはいくつか思いつきますが、おススメしないものから先にご紹介したいと思います。それはイベント系の業務です。なぜなら、イベント系の業務は基本的に事前研修が必須になるからです。
イベント系はどんなに短いものでも2日、長いものだと1週間以上拘束されることがあります。あくまで本業は個人事業主なのですから、数日間の拘束はあまり好ましくないでしょう。
個人的なお勧めは交通量調査やゴミ収集、什器の搬入出のバイトなどでしょうか。ものすごく楽というわけにはいきませんが、死ぬほどきついということもありませんし、何より現地払いが多いので、急なお金が必要になりがちな個人事業主にはうってつけです。
また、どうしても外で働くのが嫌だと言う方は、 クラウドワークスなどでフリーのライターとして副業収入を得るという方法もあるでしょう。私のおススメ以外にも、日雇いや単発のバイトを探す方法については以下に詳しくまとめてあるので、興味のある方は参照してください。
ニートが日雇いバイトのサイトを比較しておすすめ5つを決めるよ
「個人事業主やフリーランスを名乗った以上、日銭を稼ぐためにバイトをするなんて……」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、そういった暮らし方をしている人は少なくありません。私も、何度もそういった方に現場でお会いしてきました。
むしろ、今資金繰りができなくてどうしようもないのなら、そんな見栄やプライドは捨ててしまって、今をとにかく生き残ることが重要です。資金の借り入れなどを繰り返し、首が回らなくなってしまう前に、まず本業以外の収入を得る手段を考えてみてはいかがでしょうか。