地元の人の車で奥美濃観光!石徹白からやまと、郡上八幡城までの旅
先日、私が泊まり込みでバイトに行っている農園のスタッフの方から「俺の車で泊まり込み最終日の休日に奥美濃観光に連れて行ってやるよ」というありがたいお言葉をいただきました。
たった一週間のバイトで転がりこんでいただけのただのバイトに、ここまで優しくしていただけるとは思ってもみませんでした。今回は、ありがたくそのお気持ちと車に便乗させていただいて奥美濃の観光へと連れ出してもらいました。
私が一週間滞在していた岐阜県の石徹白地区に別れを告げます。サヨナラではなくマタネになるかは分かりませんが、少なくともひとまずの別れ。感慨深い思いで集落を眺めます。
そんな石徹白を出発し、まず最初に案内されたのが「魚返橋」。石徹白地区への通り道になっている橋ですが、この橋の下に流れる渓流が美しいのだとか。
時期次第では渓流ウォーキングも行われるとかで、確かに美しい場所です。上流のほうにあるためか、水の透明度もかなり澄んでいます。こういう場所の水温ってかなり低いので、夏でも唇が紫色になるぐらい寒くなるんですよね。田舎あるあるです。
そんな渓流を抜け、車を走らせること10分ほど。日本の滝100選にも選ばれた「阿弥陀ヶ滝」へと到着。なんでも昔の人がこの滝で阿弥陀如来様を見かけたことが名前の由縁になっているのだそう。
それにしても、上の看板になんて書いてあるか読めますか?
「平坦で登り易い道です」
“平坦で登り易い道”だそうです……。
これが“平坦で登りやすい道”です。うん、たぶん登山をするより平坦だし登り易いんじゃないかな。
そんな道を歩きながら、農業で疲労のたまった下半身にさらに疲労をためること数分、阿弥陀ヶ滝へと到着しました。
かなり上流のほうにあるためか水も美しく滝自体も素晴らしいのですが、こちらの滝の面白いところは岩を登って滝の横を通り、滝の裏側へと回れるところ。
滝の裏には十数尊の地蔵さまが並んでおり、簡素ながら賽銭箱のようなものが用意されています。
そして、滝のもう一方には仏像のような像が置かれているのです。あまりにもひっそりとし過ぎていて最初は全く気付きませんでしたが、阿弥陀ヶ滝の由来に合わせてあるのかもしれません。
そんな滝を抜け、帰り道を帰っていると、この阿弥陀ヶ滝のもう一つの名物を発見しました。奥美濃の天然水を使った「食べ放題の流しそうめん」です。
時刻が朝9時半と少し早く着きすぎたため、まだ店内は開店準備中。ぐるなびなどのサイトには日祝は9時から営業と書いてありますが、できるなら10時以降に訪ねることをおすすめします。
10時前ごろに受け付けが始まり、今回はせっかくなので流しそうめんだけでなく「そうめんと岩魚の塩焼きのセット(1000円)」をオーダー。ちなみに、流しそうめんだけなら500円で食べられます。
しばらく待っていると、店員さんが茹でたそうめんを抱えて、天然水がずっと流れ続けている岩の中へとそうめんを投入し始めました。こちらの流しそうめんは竹の筒に流すのではなく、岩の間に水を流してポンプの力でぐるぐると円環させている形。
見た目にも涼しい流しそうめんです。
ローカルテレビなどで何度も取り上げられる話題のお店ということで、お客さんも大賑わい。正直なところ、私はあまりそうめんって美味しいと思ったことが無かったのですが、こちらのものは麺も弾力がありシコシコとしていて美味しかったです。
そしてしばらく待っていると届けられた岩魚の塩焼き。
身がふっくらとしていて、皮のパリッとした食感とよく合う美味しい岩魚。その場で生け簀から取り上げた岩魚を焼いてくれるので、淡白ながらしっかりとした魚の味が感じられます。
正直、最初は話題だけのお店かとも思ったのですが、全くそんなことはなく雰囲気も味もしっかりとした素敵なお店でした。私たちが出るころには、数十人のお客さんでいっぱいになっていましたが、人気店になるのもうなずけます。
それから観光客が一人もいない山奥にある「村間ヶ池」というところにも連れて行ってもらいました。こちらの池は水源がどこにあるか分からないらしく、大蛇が住んでいるという伝説の残る池です。
大蛇が住んでいるかどうかはともかく、水源が分からないというのが面白い。昔は映画の撮影地になったこともあるらしく、うっそうと生い茂った森の中でなんだか不気味な空気を持っている池です。
村間ヶ池を見た後は、車を郡上方面に走らせその途中で「やまと」という地区の道の駅へと立ち寄りました。
奥美濃の名産品である食品サンプルのほか、足湯、その他の名産品などいろいろな品物が置いてあり、道の駅としてはけっこう大規模な部類。車で郡上八幡まで来たのであれば、こちらのやまとの道の駅まで足を延ばしても良いぐらいおすすめのスポットです。
とはいえ、色気より食い気な花より団子の私は、見て楽しむ食品サンプルよりも食べられる食品のほうに意識が向いていました。郡上名物「郡上鮎の塩焼き(500円)」です。
お兄さんにワンコインを渡して待つこと数分。えらく豪勢な木の器に入れられて鮎の塩焼きがテーブルへと届けられます。
郡上鮎の品種自体がそうなのかは分かりませんが、こちらの鮎の塩焼きは比較的小ぶりのサイズの鮎をしっかり焼いたもの。そのため、頭のほうから骨も余すことなくバリバリと食べられます。
なんというか、鮎風味の骨せんべいと一緒に鮎の身を食べているかのよう。香ばしい鮎の香りがたまりません。お腹が空いていれば2本3本と立て続けに食べることもできるでしょう。
やまとの道の駅は飛騨牛の牛丼が600円代で食べられたりと、岐阜の名産品をかなり格安で食べられるので、ランチに立ち寄るのもおすすめです。
改めて腹を満たした後は、メインの郡上八幡へと車を走らせます。郡上八幡の城下町のにぎわう様子を眺めながら車で山を登り、いよいよ郡上八幡城へと到着。
いいですね。コンパクトなお城ながら風情があります。夏なのに赤く染まった葉があり、青い葉とのコントラストが城の美しさを引き立ててくれるようです。
郡上八幡城は山の上にあるため、そこから見える城下町の景色も最高。
青々と茂った山の中に囲まれている郡上の密集した家の作りが、なんとも言えないミニチュア感というか箱庭感を演出。そこに実際に住んでいる人たちがいるのは間違いないのですが、こうしてみるとゲームの中の世界のようにすら見えます。
そんな素晴らしい景色を見たあとは、いよいよここまで私を観光案内してくださった農園のスタッフの方とのお別れの時間。最後に郡上駅まで車で送ってくださいました。
今回、私はたった一週間だけのお手伝いとして名古屋からこちらの地方に泊まり込みで参加しにきたわけです。
ですから、正直なことを言えば、誰かと深い付き合いになるだろうとも思っていませんでしたし、それこそ田舎や農業のことを軽く学んで自分の経験に活かせれば程度のことしか考えていませんでした。
ですが、この一週間、色々な人に支えられ、食事の材料を提供していただいたり、わざわざ休日を使って観光案内をしていただいたりと、本当に感謝しきれないほどの体験をさせていただきました。
今回スタッフさんに観光案内をしてもらったこともそうですが、他にも私が農業を体験したいという思いを持ってこちらの地方に来たことを伝えれば、農園の社長さんは不器用な私にできる限り色々な作業をやらせようとしてくださいました。
私が地域振興に興味があることを伝えれば、担当さんは地域振興に携わる地区の人々を私の滞在するペンションに呼んで「交流会&歓迎会」と称し、触れ合いの機会まで設けてくださいました。
本当に人の温かさに触れた一週間だったと思います。
「また時間ができたらバイトに来なさいよ」と色々な人が言ってくださいました。ですが、そういったバイトなんかに関係なく、いずれ奥美濃の地を訪れることができれば、そしてお世話になった人にご挨拶できればと思うほどにはこの地が好きになりました。
私は車の運転ができないので、なかなかすぐには難しいかもしれませんが、もし機会があるならばまたこの地を訪ねたいなと思える一週間なのでした。