最近、ひどい労働条件で働かされるバイト、いわゆる“ブラックバイト”がまた話題になってきているそうです。テレビやYahooニュースでも取り上げられることもあり、その内容もだんだんと酷いものになってきているそう。
アルバイトという弱い立場につけ込まれて、「低賃金で酷使される」「休めない」「辞められない」「罰金を取られる」「パワハラ・セクハラを受ける」な ど、社会問題化している「ブラックバイト」。ここ最近、どんどんそのブラック度合いはエスカレートしているという。
幸いにして、私はこういったアルバイトには日雇いの現場で一度出会ったきりで、それ以降きっぱりとその現場や会社からの仕事を断るようになったので、最近ではそういった事例には出会っていません。
とはいえ、私自身が一度は出会ったことがあるように、そういった人権やアルバイトの体調を無視するようなアルバイト先が少なくないのも確かです。そして、気の弱い人ではきっぱりと止められないことがあるのも事実でしょう。
それでもやはり産業カウンセラーでもある私も、一個人としての私も、人を使う上での最低限のルールも守れないような企業からはさっさと逃げてしまったほうが良いと言い続けたいと思います。
アルバイトの危険性を考えない肉体労働の現場
私が出会ったブラックバイトと言えば、機材の搬入出の現場でした。まず、集合した先でバイトのメンバーが集められ円陣を組まされ「ファイトォ!」と何度も叫ばされる現場です。
現場監督も、数十人のバイトがいるにもかかわらず、私や他のメンバーを全て「バイト」としか呼ばないので現場が混乱し、せかす必要もないのに常に走らせようとする方でした。
実際、その人が見ている前で移動する時は常に走らされていたので、何度も転びそうになり、翌日は動けないほど足がパンパンになっていたのを覚えています。
直接の上司は「あの人の言うことは聞かなくていいよ。機材を持って走らされてケガをした子が何人もいるからね」とボソッと教えてくれたので、その人の見ていない時はゆっくりと丁寧に作業するように心がけていました。
ちなみに、普通は単発や日雇いのバイトであっても、雇入れ当日であってもケガに対しては労災が降りるものですので、たとえアルバイトでもケガをしたら申告するべきです。
私の現場では、よほどひどいケガでないと「そんなものはケガのうちに入らない」と一蹴されてしまう場合もあったようですが、幸いにして私はケガをすることなく無事終えることができました。
個人的な経験として、直接自分が指示するアルバイトや現場の1人1人の名前、もしくはポジションを覚えようとしない上司にあたってロクなことはなかったですね。
もちろん、たくさんの人間がいるので実際には覚えきれないのは当然です。ですが、少なくとも直接一緒に仕事をしようとする部下を、一人の人間として見ないやり方を取られる方が多いのは確かです。
さすがにアルバイトの途中で帰るようなマネはしていませんが、私はこの現場にはそれ以来二度と行っていません。
ブラックバイトとは言えないけれど……
そこまでヒドイ事例はそうそうありませんが、正直なところ「それはどうなの?」と思う現場なら他にもあります。
私が初めて行った個人経営の飲食店のアルバイトです。知人とご飯を食べに一度だけ行ったお店で「ここで働いてみない?」と言われたのがきっかけ。店長と二人っきりのバイトです。
もちろん店長には「私が初めての飲食店であること」「それどころかアルバイトの経験すらないこと」を伝えていました。ちゃんと教えてあげるからいいよと言われたので安心して入ってみたのですが、これが間違いでした。
結論から言えば、私は一日でそのバイトをクビになりました。
店長が何一つ教えてくれなかったからです。極端に言っているのではなく、本当に何一つ店長からは教えてくれないバイトで、いきなり「ホールをやって」と言われただけ。
まず、メニューは全て外国料理なので、お客さんからどんなメニューかを聞かれるのですが、それを店長に確認するたび「なんでそんなことも知らないんだ!」と怒られました。
メニューの伝票の書き方、カクテルの作り方、ビールの注ぎ方、一つ一つを尋ねるたびに怒られます。テーブルから皿を下げるタイミングについても、事前に教える時間はあったにもかかわらず「まだお客さんが食べているのに皿を下げるな!」と皿を下げた後になって怒られます。
ついに「きみ、やる気がある?」と聞かれた私は、「教えていただければ全てこなします」と答えました。
自慢ではありませんが、私はいろいろなバイト先で「こんなに物覚えが良いバイトはそういないし、真面目だ」と言われたこともあります。当時は初めてのバイトでしたが、説明されればちゃんとこなす自信はありました。
「飲食店の接客なんてマニュアルにしたら数千ページ超えちゃうよ? そんなの無理でしょ」と言われても、「大丈夫です。覚えます」と答えました。すると、「ふざけるな!」と一喝され、結局私はその日でクビになりました。
初めてのアルバイトは1日でクビ、というのが私の結果です。初日に働いた分の賃金はもらえないまま帰ってきましたが、もう顔も見たくなかったので請求に行くこともしませんでした。
一時期は、このバイトのせいでアルバイトに行くことが怖くなり、一年ほどバイトに応募することすらできませんでしたし、自分はまともに働けるのだろうかと不安になったこともありました。
結局、今では個人事業主になってしまったわけですが、たまにバイトに行けばちゃんと評価してくれる人がいます。私が間違っていたのではなく、やはりその人が他人を使う能力がなかったのだと今では考えています。
理不尽なバイトなら止めてしまったほうがいい
ここまでの事例は私の不幸自慢をするために出したものではありません。
そうではなくて、もし似たような事例の方がいらっしゃったら、別に止めてしまってもいいんだよということを言いたかったのです。
私は別に厳しい指導が悪いとか、きつい労働環境にアルバイトを置くことが間違っていると言いたいわけではありません。
むしろ、そんな中でも頑張ることで見えてくるものはきっと何かあると考えていますし、そういったバイトをブラックバイトと呼ぶのは何か違うのではないかなとも思います。
ですが、それでも雇用関係に甘えてアルバイトや派遣を人扱いしない、教育すらしないといった“人間関係としての理不尽”があるのであれば、それに対して頑張る必要はないと思うのです。
「こんなことで止めていては社会でも通用しない」と言う方もいらっしゃるかもしれませんし、私も実際に言われたことがあります。
でも、少なくとも私は自分の事業だけでメシを食える立場に立てるようになりました。たまに飲み代や趣味の旅行代を稼ぐために日雇いバイトに行くことはありますが、それがなくとも十分に暮らしていけるぐらいには“社会で通用して”います。
その人たちも、自分の知る限りの狭い社会しか知らないのです。理不尽に対して立ち向かう必要はありません。私のように自信を無くしてしまって、アルバイトをすることすら怖くなってしまってはなんの意味もありません。
理不尽に襲われたとき、どう立ち向かうかを考えてしまいがちな人は、いかに自分の身を守るか、どうやって安全に逃げるのかを時には考えてみてもいいのではないでしょうか。
名ばかり産業カウンセラーの私ですが、個人的にはそう思っています。