カフェを開業したけれど、3ヶ月で潰して売りとばした失敗話

カフェ開業!

 

なんと憧れる言葉でしょうか。フランチャイズにしろ完全フリーの独立にしろ、未だに「脱サラしてカフェ開業!」なんて言葉をときどき耳にするぐらい、カフェの開業に夢を持つ人は多くいます。

 

ただ、ご存じの方も多くいるでしょうが、飲食業の実情はいまだに厳しい状態。夢を抱くほどには稼げずに敗れ去っていく経営者も少なくないのです。そしてカフェの経営には金銭面以外のトラブルもあります。

 

そこで今回は、お恥ずかしい話ですが、私が過去にカフェを開業して失敗した事例をご紹介したいと思います。

 

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カフェを誰かに任せるという経営方針

これはカフェに限りませんが、経営者が新たに店舗を開業するとき、一番に決めなければいけないことがあります。それは、「カフェの運営には誰が立つのか」

 

もちろんたいていの人は、自分が立つことを想定することが多いと思います。ただ、それにしたって、時間帯で誰かに任せたり、共同経営で運営したり、アルバイトにホールを完全に任せきったりと、程度差はあれど、どこかの業務を他人に任せることがほとんどでしょう。

 

私の場合は、他にも店舗を持っていたので、完全に他人に任せて店舗を運営することを選択しました。

 

コンセプトは「"プロ"が一人一人に丁寧に接客するカフェ」。現在、チェーン店や中規模店のサービスはかなりシステマティックなので、お客様1人1人に合わせるのはむずかしい状況です。それに、キャッシュオンデリバリーセルフ式のカフェも段々と増えています。

 

そんな状況だからこそ、「プロが個々人のお客様に合わせられる」というコンセプトに、小規模企業のカフェが入り込む余地があるのではないかと考えたのです。

 

すると、店舗自体のサイズも自然と小さくなります。そのため、最初は店長1人で運営し、形ができてからスタッフを追加していくというスタイルを取りました。

 

そこで、他の飲食店で働いているスタッフに声をかけ、その中から飲食店の経験も豊富な30代のオープニングスタッフ1名を選定したのです。

 

選んだ理由は「(飲食系の)全国大会で優勝したい。そのために勉強できる環境に入りたい」というプロへの憧れを見せる志望動機を好ましく思ったからです。現状の技術に多少の改善点はありましたが、"多少"であればやる気でどうにかなります。

 

「これから一緒に頑張ろう!」と伝え、カフェのオープニングに向けて1か月間のトレーニング期間をはさんで、集中練習を重ね、いよいよオープンを迎えたのです。

 

経営状態は悪くなかったが、スタッフとの折り合いがつかなかった

冒頭でも触れましたが、今回のお話はカフェ開業の失敗話です。しかもたった3ヶ月でお店を潰した話

 

「小規模店舗で採算が上手く合わずに失敗したんじゃないの?」と思われるかもしれません。

 

実は、そんなことはなく、オープン当初から収支としてはスタッフの給料を払ってもトントンぐらいにはなっていました。私自身がWebで集客できるというのもありましたが、関連店舗を持っていたので、そこからお客様をご案内できたというのもあります。

 

それにコンセプトが変わっていたということもあって、メディア取材などの依頼もオープン前から何件かあり、注目度合も悪くなかった状態でした。

 

そんなカフェが潰れたのは、ひとえに会社全体の方針とオープニングスタッフとして立った店長の熱意のすれ違いのせいでした。

 

「プロが提供するお店」というコンセプトの「プロ」という部分に対してどうしてもスタッフと折り合いがつかず、「そこまで付いていけない」と言われたのが決定的。オープンから3ヶ月で店を潰す残念な結果となってしまいました。

 

先に言っておくなら、スタッフは全く悪くありません。全面的に選定から雇用、教育までを行った会社、ひいてはわたしの責任です。最初に、どこまでの内容を求めるのか、具体的な業務レベルの話をしなかったことが失敗の原因でした。

 

このスタッフには本当に申し訳ないですが、これを勉強に、その後のスタッフには目標レベルのコンセプトと、それに伴いどのような業務をすべきかを具体的に伝えるようになり、今のところは上手く回っています。

 

カフェは閉店し、他のオーナーに転売

ちなみに、カフェを潰したというと赤字を抱えたと思われがちですが、実は最終的には30万円ほどの黒字になっています。

 

カフェを作るのにかかった費用は、実はかなり安くて200万程度。居抜き(前の店舗の造作などが残っている状態)の状態で店舗を借りたり、メーカーと直接交渉して器具を安く卸してもらったり、付き合いのある業者に造作を作ってもらったりで、かなり安くすませました。

 

それを、店を潰して他のオーナーに売る時には300万の値段を付けて販売したのです。実際には、70万を値切られたので、230万の売値。トータルでは30万円ほどの黒字でした。

 

※「100万もふっかけるなんてひどい!」と思われるかもしれませんが、賃貸店舗も卸売の器具や商品も、経営者なら値切るのは当たり前なので、売り手側も基本的には値切りを見込んだ価格を付けていることがほとんどだと思います。

 

その後は、その30万円でまた別の店舗の設備を整え、新たな黒字を生み出すことができました。経営者ならタダで転ぶどころか、転んだらお金も拾ってこなければいけないのです。スタッフの生活だってありますからね。

 

ただ、「30万円のプラスならいいじゃないか」と思われるかもしれませんが、カフェのコンセプトを決めて、内装工事に付き合って、潰してからの転売までして……という時間を考えれば、4ヶ月かけてたった30万円の黒字しかなかったわけです。

 

数字上は黒でも、かけた時間を考えれば赤字。

 

それはもちろんスタッフにとっても一緒です。当時のオープニングスタッフは、今、自分のカフェをまた新たに持つために、日雇い派遣や単発のアルバイトで食いつないで貯金をしていると言います。

 

もちろん、私自身も過去には日雇いバイトをしていたことがあるので、それ自体が良い悪いと言いたいわけではありませんが、社員としてきちんと独立の準備をさせてやれなかったことには大変申し訳ないと思っています(もともと、独立までの腰掛という形で契約をしていました)。

 

自分のためにもスタッフのためにも、一度開業したカフェはやっぱり基本的には潰したくないなと思うのでした。