大学院を修了した若者は10万円では田舎で暮らせない

田舎で家賃1万円以下の賃貸をひたすら紹介し続けるサイトがあります。このサイトを見ていると、安く暮らすには日曜大工の技術はほぼ必須なのだなと思います。

 

家賃一万円以下 | 田舎の生活(を、夢見ている)

 

「安い家=物理的欠陥のある家→日曜大工の技術が必須」という構造です。中には素人ではどうしようもない配管工事などから始めなければいけないものもあります。もしくは、車が無いと日用品の買い物にすら行けない場所にある家。

 

田舎に住むランニングコストは確かに低いかもしれませんが、都会から田舎に移り住むイニシャルコストは都会の中で移動するよりも明らかに高くつきますよね。

 

他にも、こんなサイトを興味深く読んでいました。

 

起業として選んだ農業〜新見市・中川さん〜 | 田舎暮らし体験談 |

 

定住者紹介 「農家民宿 イワンの里」秋元秀夫さんにインタビュー!/京都府ホームページ

 

「田舎では人手が足りないから、仕事がないなら農家でもやれよ」なんてコメントを耳にしますが、就農訓練から自身の農地を開くまでを考えると、誰にでもできることではないですよね。代々農家をやってきた人と話を同じくすると、大変なことになります。

 

いずれにしても、イニシャルコストの大きさが問題です。

 

他にも田舎の仕事の代表例として林業が挙げられますが、農林水産相のデータを見ると、林業も厳しい状況に置かれています。

 

林野庁/第1部 第IV章 第1節 林業の現状と課題(1)

 

先ほど田舎での生活はランニングコストが低いと言いましたが、移り住む土地や家の選択を間違えるとむしろ都会暮らしよりも高くついてしまうことも少なくないようです。

 

協力隊応募を考えている人へ

 

話は変わりますが、少し前に“田舎で月10万円の暮らし”が話題になったことがありました。各種メディアでも話題になったようです。

 

月10万円で豊かに生きる田舎暮らし (幻冬舎文庫)

月10万円で豊かに生きる田舎暮らし (幻冬舎文庫)

 
生活費月10万円から! 決定版 失敗しない田舎暮らし入門 (別冊宝島 1898 ホーム)

生活費月10万円から! 決定版 失敗しない田舎暮らし入門 (別冊宝島 1898 ホーム)

 

 

ただ、この手の本って、種類によって生活費が10万円なのか、所得が10万円なのか、収入が10万円なのかごっちゃになっていて、正直参考にならないことの方が多いですよね。

 

というか生活費10万はともかく、所得10万も収入10万も普通に暮らそうと思えば、かなり難しい話です。

 

たとえば以下の記事では、田舎暮らしではないものの生活費のシミュレーションをされており、所得10万円の(フリーランスの)生活がどんなものかを書かれています。企業に属して働く人などはまた話が別ですが、それでも厳しい生活には変わりないでしょう。

 

フリーランスで月10万円で食ってくなんて無理 - 法廷日記

 

田舎に特化して言うなら、この家賃が少し抑えられて、車の税金・ガソリン代をプラス、後、自治会費などの出費が増えるぐらいです。ご本人も言われているように、かなり希望的なシミュレーションですが、それでも憧れの生活からは程遠いように思います。

 

そして、生活のシミュレーションや田舎暮らしのサイトを見ていていつも不思議に思うのですが、どなたもローンや奨学金の返済については言及されないんですよね。

 

大学院まで奨学金で行ったとすると、毎月3万程度の返済を迫られます。よく、「高学歴ワーキングプアが多いのはプライドが高いせいで仕事を選ぶからだ」なんて言われることがありますが、必ずしもそればかりが原因ではありません。

 

もちろん、これは奨学金制度を批判したものではなく、事実上、暮らしに必要なお金を計算する際に、こういった支出が見逃されがちなのが問題だと述べているだけです。

 

こういった“お金はないけど、恵まれた田舎暮らし”に出てくるお話の登場人物は、その多くが借金を持たない年金暮らしの高齢者の方です。働かなくていい時間を農作業に充て、それで食費の大部分をまかなっているという方が多いように思います。

 

「家庭菜園レベルなら個人でできなくもない」というコメントを見たことがありますが、彼らの言う“家庭菜園”とは、それこそ1人の食費を安定的に賄えるレベルの話をしています。

 

少なくとも、家の庭で畳一畳分ぐらいのスペースを使って行う家庭菜園とは話が違うことは確かだと言えるでしょう。そのレベルの家庭菜園を働きながら安定的に維持できる人ってどのぐらいいるのでしょうか。

 

この話をし出すと絶望的な話しかないように思うのですが、ネットでよくみる“田舎での物質的には恵まれないけど精神的に恵まれた暮らし”というのは、一体どこにあるのでしょうね。

 

ふと、そんなことを考えてしまうのでした。